「というわけで、サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜を今更買ってしまった……」
「へえ、どうして今更? それに流行の萌えなんてどうでもいいのだろう?」
「話はかなり昔に巻き戻る」
「うん」
「そもそもだな。奇跡的に良くできていると評価したゲームが若干ながら存在する」
「それは?
「表現やシーンの切り替えなどの些末な部分にまで十分な配慮が行き届いていて、更にゲームとしても良くできているタイトルだ」
「たとえば?」
「SFCのFRONT MISSIONの名前を挙げたいね」
「他には?」
「Saturnのサクラ大戦」
「出た! サクラ大戦!」
「サクラ大戦は、突っ込む気になれば突っ込めるところは多いが、質の高さも突出していたから、特に印象に残ったわけだ」
「うん」
「更に言えば、美少女カタログ型ゲームとしてはプレイしていない」
「というと?」
「ひいきの女の子が由里君であり、深夜に見回りでは必ず会いに行ったほどだ」
「それって、帝劇3人娘。攻略できるヒロインじゃないし」
「というわけで、そのままプラットフォームをドリキャスに変えて4まで行ったわけだ」
「意外と長く続いてるんだね」
「やはり3の凄さは半端ではなかったからね」
「というわけで問題は4だ」
「それがどうかしたの?」
「4がやはりイマイチだった。本来予定されていた4ではないとも言うしね」
「物足りなかった?」
「さすがに3に比べるとねえ。それに……」
「それに?」
「4で組んだ自分の大神歌劇団は結局巴里歌劇団そのものになってしまったし」
「つまり?」
「3でいい。巴里歌劇団でいい。ここで終わっていいと思ったのだよ」
「ちなみに、3でひいきなのは誰?」
「ロベリア」
「なぜ?」
「最初はエリカの筈がプレイしているうちにコクリコのパラメータが上がってしまったので、これはコクリコエンディングに行くかと思ったところ、副隊長にロベリアを選んだらロベリアにエンディングに行ってしまった」
「それで?」
「ロベリアの話は良かったから、こいつがパートナーってことでOKだ」
「それなら、もっと続きを見たかったんじゃないの?」
「いや、気持ちの上で終わっちゃったからね」
「それでどうして今更5なの?」
「いやまあ、今日はちょっとてくてく歩きながら考えていた訳よ」
「何を?」
「もう最新ゲームの流れから取り残されてるなって」
「なぜ取り残されるの?」
「そう。その理由を自分も考えた」
「貧乏だから?」
「一見最もらしい理由だが、そうじゃない。ゲームへの投資額は、昔ほどではないとはいえ、けして小さくはない。実際、引退したPC-Engine DUOやドリキャスとかを除外して考えても、Xbox360とWiiとDSiとPSとPS2とPSPとゲーム機として買ったiPodが並んでいるわけだし」
「では理由は何?」
「Xbox360を買った頃、まだ何が主流になるかははっきりしなかった」
「そうだね」
「でも、今や国内勢力という意味では据え置き型はPS3が主流になったのだ」
「FINAL FANTASY XIIIもPS3だね」
「うん。でも、PS3は持ってない。今のところはね」
「そうだね。指をくわえて空を飛んでいく新作ゲームを見上げて見送るしかない」
「PS3だけ買っても問題は解決しない。モニタごと変えないとならないから、更にハードルが高い」
「そうだね。NTSC解像度ならすぐ繋がるけど」
「高解像度で遊ぶには今のモニタではダメだ」
「そうだね。Xbox360だって、VGAケーブル経由で繋がるけど、720iで頭打ち。完全に機能を引き出せてる訳じゃない」
「Xbox 360が得意な洋ゲーにもそれほど興味がないし」
「もう何ヶ月も電源入ってないね」
「従って、遊びの主流は古いゲームにならざるを得ない」
「なるほど、機材面での制約だね」
「それにまだ終わってない古いゲームも多いし」
「たとえ持っていないタイトルも、古いプラットーフォーム向けなら安く買える」
「その通り、安いのだ」
「やっと核心に近づいたね」
「というわけで、ポイントだ。今日、フジアキコ物語を105円で買った」
「それもまたマニアックな」
「個人的に特撮解禁だよ」
「でも、それじゃ理由の説明になってないよ」
「その後で、ふと見るとサクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜PS2用が500円で売っていた」
「ええ!?」
「フジアキコさまのお導きだ。というわけで、500円玉握りしめて買ってしまった」
肝心な話がまだだ §
「でも500円なら買うって言っても、サクラ大戦はもう気持ちの上で終わってたんでしょ?」
「うん」
「ならば、どうして買ったの?」
「実は後から重大なことに気づいたのだ」
「それはなんだい?」
「オレにとっての大神はロベリアをパートナーにして終わった」
「そうなの?」
「そういうことだ。そして、オレにとって、大神の理想の居場所は巴里だ」
「うん。それで?」
「だから、紐育の大神の話など興味も無かったのだ」
「そういうことになるね」
「でも、そうじゃなかったのだ」
「というと?」
「実はVの主人公は大神じゃないのだ」
「ええ!?」
「しかも、こいつは伝統的に身体が勝手に動くらしい」
「うん」
「そして女装するらしい」
「えー!?」
「一度はどういうゲームかプレイしてみたいよな」
「もはや萌え関係ないね」
「美少女カタログとも無縁」
「縁が無さそうだ」
「ちなみに、PS2リメイクの第1作(サクラ大戦 〜熱き血潮に〜)では由里君とデートできるらしい」
「なるほど。Vとこれを達成するまで、未練は残るということね」
「でも、萌えが大好きなオタクとは100%意思が疎通できないぐらい遊び方が違うぞ」
「というか、今時のオタクはサクラ大戦なんてやらないよね」
「うん、やらないからシリーズとして5で終わってしまったのだろう」
オマケ §
「しかし、買った板をブートする前から話がいくらでも続くね」
「実は更に言えば、サクラ大戦には思い入れがある」
「というと?」
「発売前、ゲーム番組で情報が少し流れたことがある。大正時代で女の子のチームで表の顔は歌劇団だが、実は帝都を守るって戦うという設定だけで、なんだこれは、ワクワクするじゃないかと思った」
「うん」
「でも、周囲はなんだそれという感じで冷たかった」
「それで?」
「今にして思えば、当時から既にオタクは作品の水準に到達できるだけの水準じゃなかったのだろう」
「それってどういうこと?」
「サクラ大戦がターゲットにしたファン層は実際には虚構であったということだ」
「虚構?」
「そんな層は実際には無かったのだ。あるいは、あっても極めて少数だ。つまり、あるように見せかけられていただけだ」
「それで?」
「そういう意味で、おいらも想定されたファン層ではあり得ない。サクラ君より由里君がいいと言った時点で、やはりずれている。更に、米田指令が酒飲んで愚痴ってたり、大神がセットを直してるシーンがいいなんて言い出すと、もう萌えとは無縁」
「どういうことだろう?」
「さあ、どういうことだろうね?」
「で、結論は?」
「別にない。熱心なサクラファンという訳でもないしな」